2008年12月01日

金融機関の共食いを容認する米当局

米金融界が米国をつぶす

 これだけの話でも、すでに米政府は十分に自滅的だが、11月25日のウォールストリート・ジャーナル(WSJ)には、もっと破壊的な話が載った。そもそもシティグループの株価が急落して破綻しかけたのは、同業他社の金融機関がよってたかってシティのCDS(債権の保険)の料率をつり上げて見かけ上の倒産確率を引き上げ、その上でシティの株を空売りするという、シティを潰して儲けようとする行為を行ったからだと、記事は指摘している。

 WSJの記事が直接検証したのは、シティより2カ月前に同様の手口で潰されかけたモルガンスタンレーのケースである。WSJが「Anatomy of the Morgan Stanley Panic」(モルガンスタンレー危機の解析)という記事で報じたところによると、08年9月15日のリーマン破綻の2日後、リーマンと同業の投資銀行であるモルガンスタンレーの株価が急落し、倒産確率を示すCDSの保険料も高騰し「次はモルガンスタンレーが破綻しそうだ」という状況が市場で醸成されたが、これは投機的な策略の結果だった。(関連記事)

 メリルリンチ、シティグループ、ドイツ銀行、UBS(スイス)、カナダ・ロイヤル銀行など、米欧のいくつかの銀行やヘッジファンドは、モルガンスタンレーのCDSを意図的に高い価格で売買して料率をつり上げて、倒産確率が上がっているように見せかけるとともに、モルガンスタンレー株を空売りしておき、株の急落で儲けたと、記事は指摘している。モルガンスタンレーのCDS料率の上昇を見た多くの投資家が、同行の株を投げ売りしたが、破綻には至らなかった。

 そしてWSJの記事によると、同じ手口はベアースターンズ(今年3月)や、リーマンブラザーズが破綻する直前にも行われ、2行を破綻に至らしめた。そして最近では、シティグループに対しても同様の手口が行われたと、記事は書いている。シティは、モルガンスタンレーの時には加害者だったが、2カ月後には被害者となった。

 この記事を読んで私が考えたのは、こうした金融機関どうしの共食い状態に、米当局はどう対処したのかということだ。財務省や連銀、証券取引委員会などが、この事態を知らなかったはずはない。日本なら、ある金融機関が他社の株を空売りして、他社を潰してでも儲けようとしたら、すぐに当局がその動きを察知してやめさせるはずだ。

 かりに、08年3月のベアースターンズ破綻時に、米当局がCDSつり上げと株空売りの策略に気づかなかったとしても、その後の調査では気づくはずで、9月のリーマン破綻やモルガンスタンレー危機が繰り返されるのは全く奇妙だ。私が考えざるを得なかったことは「米当局は、ベアスターンズやリーマンが金融機関の共食いによって潰されることを容認した」という見方である。
タグ:Finance
posted by rawwell at 10:07 | Comment(0) | TrackBack(0) | ビジネス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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