2008年10月01日

のろのろ「日本式」金融がまた流行するのか――フィナンシャル・タイムズ(フィナンシャル・タイムズ)

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しかし今となって、日本のノロノロぶりはそれほど愚かとは思えなくなった。今回の金融危機でウォール街のビッグネームが次々と倒れても、日本の金融機関は偶然にしろ、意図的にしろ、比較的に無傷なのだ。冒険心あふれる外国の同業他社は、金を使いまくって確かに大もうけしたが、結果的に惨憺たる結果に見舞われた。対して日本のほとんどの金融機関は利益のほとんどを、昔ながらの古臭いやり方で作っていった。

今や、立場は入れ替わった。野村ホールディングスがリーマン・ブラザーズの資産を、バーゲン価格で買い取った。わずかに生き残った米投資銀行のひとつ、モルガン・スタンレーには、三菱UFJが80億ドルを出資することになった。

運命の逆転はあっという間だった。しかしその割には、そら見たことかという批判はほとんど聞こえない。「アメリカにもう10年間も、ああしろこうしろと言われ続けてきたことを思うと、日本側の自制は見事だ」と言うのは、マッコーリー証券のエコノミスト、リチャード・ジェラム氏だ。「彼らは本当はこう言いたくて仕方がないに違いない。『空売り禁止で市場を操作したりするのは、実によくない。必要なのは透明性の低い救済策ではなく、自律的な問題解決だ』と」 日本はアメリカから再三再四、もっと活発な自由市場資本主義に移行するようしつこく求められていたのだから。

危機を乗り切るためにアメリカは今、自分たちが1990年代に日本に説教していた内容と同じことを、米国内でやろうとしている。日本が黙っているは、そのせいでもある。1990年代に米政府の関係者たちは、得てして容赦ない口ぶりで、日本の銀行はもっと素早く不良債権を認めなくてはならない、日本政府は公的資金を投入して流動性を回復しなくてはならない??と言い続けていた。

「日本に対する重大な不満は、時間がかかりすぎたということだった」とジェラム氏。「アメリカの長所を探すとするなら、危機突入からまだ1年弱の現時点で、すでに全力で取り組んでいるという点だ」

日本銀行のデフレ対策が想像力に欠けると批判されていた当時、田谷禎三氏は日銀審議委員だった。その田谷氏も決して批判を口にしない。「言ってもどうせ聞かないだろうし」と。

しかしITバブル崩壊の直後に公定歩合を大幅に下げ、またサブプライム危機の発生を受けて大幅に公定歩合を下げたアメリカのやり方は、日本のもっと慎重な対応と同じくらいまずかったのかもしれない。田谷氏はこう言う。

連邦準備理事会(FRB)のベン・バーナンキ議長がかつて日銀に対して、デフレ抑制のためにケチャップを(つまり何でもいいから資産を)買うよう求めたのは、有名な話だ。しかし日本当局者の多くは、表立っては言わないものの、今回これほど激しく崩壊したバブルをそもそも作る原因となったのは、過剰な低金利政策だったと見ている。日銀はかつて、中央銀行たるもの消費者物価にばかり注力するのではなく、いかにして資産バブルに風穴を開けていくかに取り組むべきだと主張して、あちこちで批判された。しかし今や日銀のこの姿勢が、世界中で再評価されつつある。


田谷氏は米金融政策について、米当局が学んだつもりになっている教訓は、もしかして正しくないのかもしれないと指摘する。ある意味で、米当局の政策はきわめて成功したからだ。2001年以降、米経済は景気後退を回避してきた。しかし簡単な政策には副作用があることを忘れていたのだという。

一方で日本では、金融機関がそもそも慎重だったことが幸いしたと田谷氏。「日本はアメリカの投資銀行とは違う。アメリカの銀行は、借金で資産を買いまくっていた。そのビジネスモデルはすでに崩れてしまった」

だからといって、日本の金融機関がいま比較的に健全な状態にあるのは、別に日本の銀行がとりわけ賢かったからではないと田谷氏は言う。「日本の金融機関が遅れをとっていたのは事実で、そのメリットなど何もない。2005年まで日本の金融機関は不良債権処理に忙しかった。そして、そのあとちょっと一休みした。日本の金融機関が(アメリカの)真似をするだけの時間が、そもそもなかったのだ」

日本の財政幹部はもっと率直にこう認めた。「賢明だったというよりは、運が良かったのだ」と。
タグ:Finance
posted by rawwell at 08:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | ビジネス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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